現地レポート

  • 2018.05.17
  • まつかわゆま

ウェーェイク・アァップ‼︎ スパイク・リー、吠える

70年代はじめ、ベトナム戦争が泥沼化している時代、アメリカ国内では人種差別反対運動が苛烈になり、ブラックパンサー団が頭角を現し、その一方で白人至上主義者たちがKKKを名乗り活動を過激化させていた。
そんなとき、使命感に燃える黒人青年が警官になる。そして昇進のために潜入捜査官になって、KKKに潜入する。実在の彼、ロン・スタールワースを演ずるのはリーの親友デンゼル・ワシントンの息子ジヨン・デビッド・ワシントンだ。
スパイク・リー、「ジャングル・フィーバー」以来、27年ぶりのコンペティション入りである。
「この作品は、WAKE UP!callなんだ。目覚めろ、立ち上がれってことさ。あのホワイトハウスにいるマザーFAC・・を選んでしまうような時代だし、しかも世界中でおなじようなことが起こっている。だからこの作品はアメリカの黒人差別についてだけの映画ではない。もっとグローバルな、とんでもない社会に対してのプロテストなんだ。どうやってプロテストするか…、目を覚ますんだよWAKE UP! そして、何かするんだ。行動せよ、だ。チャンスはある。俺は希望を信じている」

アダム・ドライバーは同僚警官で共にKKKに潜入する。(上)

ブラックパンサー団の活動家で、ロンの恋人になるパトリスを演じるのは「スパイダーマン ホームカミング」のローラ・ハリアー(中)

そして「俺も61になったよ」というスパイク・リー監督(下)

 

  • 2018.05.15
  • まつかわゆま

死から復活するラザロの物語を現在に。HAPPY AS LAZZARO会見

初コンペティションで2014年カンヌ・グランプリを受賞したことのあるアリーチェ・ロルバケル監督の新作は時を超える寓話である。


「世界的にカタストロフがあちこちで起こり、アポカリプス的世界になっている現在、世界の終わりが近いという感じすらしています。そんな世界でラザロの物語を体現してみようと考えました。宗教的でもあり、寓話であり、ポリティカルなストーリーでもあります」と監督。前回とはかなり違う作家としての自信や威厳の感じられる会見になった。ラザロとは、聖書にある死から蘇る奇跡の聖人のこと。

ラザロを演じるのは新人のアドリアノ・タルディオロ。誠実無垢な笑顔がいい。

キャストはラザロ以外、80年代と現在を二人で演じる。ヒロインの現在を演じるのは監督の妹アルバ

  • 2018.05.15
  • まつかわゆま

是枝監督、カンヌに‼︎日曜日を満喫⁉︎

会見に勢ぞろい

カンヌに出品7作目になる是枝裕和監督。海外のファンも多い。倒着して直ぐ海外メディアの取材が10数件はいっていたという。公式上映は日曜日の夜10時30分からのソワレ。映画祭が用意する公式上映の時間帯としては最高級の待遇、期待度が分かるというものだ。
公式上映の翌朝11時から公式記者会見が行われた。
「いつもは公式上映と記者会見・フォトコールが同日なので疲れ果てるんですが、今年は翌日なので余裕です」と監督。お土産を買いに公式グッズ売店に行ったり、子役たちを海外沿いの遊歩道公園にある遊具にのせたりと日曜のカンヌを楽しんだそうだ。
「このところ現代日本社会と家族の存在の摩擦を描こうとしていますが、今回はより社会性によって考えてみようと思い、社会によって切り離されていく家族を描くことにしました。彼らはどこかで一度家族を作ることに失敗していて、もう一度意識的にやり直そうとしています。けれど彼らは日本で報じられたら、単に犯罪者として評価されるでしょう。けれどそこでは報じられない、彼らなりの光というか喜怒哀楽がある。それを描いてみたいと思ったのです。そこにはこちら側の家族観や共同体観が逆に映し出されるのではないかとも考えました」
社会派、ドキュメンタリー的と言われる是枝作品。その奥深さは癖になる。

  • 2018.05.15
  • まつかわゆま

実在するクルド人女性部隊を描く

 

隊長を演じるファラハニ。一昨年は「パターソン」でカンヌに。

ジャーナリスト役のベルコはカンヌ女優賞女優。

実在するクルド人女性部隊の物語。イスラム国に支配されたいくつもの町を解放し、その勇猛果敢さを知られる部隊である。その構成員の多くは、イスラム国に拉致され、拷問されたりレイプされたり売り飛ばされたりと過酷な経験をし、そこから逃亡したのち部隊に参加している。語り手となる女性ジャーナリストにも何人かのモデルがいる。

演じている女優たちも様々なバックグラウンドをもち、中には幼いころドイツに難民として逃れたクルド系の女優も。隊長役のファラハニはハリウッドでも活躍する女優だが、デビュー作以来何回もクルド系女性の役を演じてきたという。
監督はイタリア系フランス人の女性監督エバ・ハッソン。

「私の祖父は1937年にフランスイタリア国境のあたりでレジスタンスに参加アンチファシスト活動をしたと強制収容所に送られました。大叔父はアナキストでした。そういう家に育ったので、自由や人権を抑圧する組織に対しては常に反対するのが当たり前なのです」
女優たちも口々に「女性たちが犠牲者としてだけではなく、みずから立ち上がり戦っていることを、この作品を通して知ってもらいたいし、そのために私が演じなければ、という思いで参加しました」と語る。 ジェンダー・イクゥオーリティ運動の高まる現在。女性が銃を手にして戦場に出る、こういう形の平等もあるのである。

  • 2018.05.15
  • まつかわゆま

パナヒ監督の不在際立つ3FACES会見

イラン政府から出国の許可が出なかったパナヒ監督不在のままに、中央の空席を挟んで二人の女優ベハナズ・ジャファリとマルジャヤ・ラゼルとカメラマン、パナヒ組の編集者が並んだ。

ラザイは女優志願の少女を演ずる

ジャファリはイランの大女優

「パナヒ監督は自分がしたいことが明確で、コミュニケートしやすい人。迷わないので時間の無駄がありません。といっても演ずる自由はそんちょうしてくれます。例えば箱の中にたくさんの色えのぐがあるとして、演ずる人はどの色を選んでもいいのです」とラゼルが言えば、カメラマンは
「パナヒはアーティステッィクな監督で、スタンダードなやり方や撮影方法を好みません。そしてどんな場所でも、自分が欲しい場所を天才的に見つけ、どう撮りたいかを見つけるのです」
という。
「パナヒはオンリー・ワン。どこを切っても、どこを撮っても、ジャファール・ジャファール・ジャファール、なんです」と主演女優ジャファリはしめくくった

シネマアナリストまつかわゆま

演劇に明け暮れた大学卒業後、女性誌編集者を経て映画ライターに。映画から時代を読むシネマアナリストをめざし、雑誌・テレビ・ラジオ・ウェブなどに書いてしゃべって四半世紀を超えました。東放学園講師など、先生業も。現在、大学院でドキュメンタリー映画を研究中、第三の青春を謳歌しています。著書に「映画ライターになる方法」(青弓社)、「シネマでごちそうさま」(近代映画社)など。

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