現地レポート

  • 2018.05.21
  • まつかわゆま

ついに完成!テリー、上機嫌。 ドン・キホーテを殺した男 会見

今年のクロージング上映はテリー・ギリアム監督「ドン・キホーテを殺した男」。20年前に企画が始まり、19年間に8回頓挫し、それでもあきらめずに、やっとやっとやっと完成させたという執念の作品。


会見場も盛り上がっていた。テリー・ギリアム監督もキャストもハイな状態。…ジョナサン・プライス以外(笑 会見中ギリアムやキャストによって繰り返されたジョーク。何があっても冷静なプライスである)
「ドン・キホーテは25年間俺のヒーローであり続けた。キホーテは、夢であり、リアリティでありなによりも人生そのものの存在なんだ」とギリアム監督。

20年前ジョン・ロシュフォールで始まり、マイケル・ペイリン、ジョン・ハートを経て、ドン・キホーテ役を最終的につとめることになったジョナサン・プライスは「未来世紀ブラジル」以来長いつきあいのギリアム組。

ジョナサン・プライス

オルガ・キュリレンコ

「キホーテ役にふさわしいくらいに年を取ったしね。テリーとは長いつきあいなんだが「未来世紀ブラジル」の後は二度と仕事したくないと思ったこともあった。でもfinaly,finaly,finaly作品が完成できて本当にうれしい」というプライスに
「ひげと眉毛もつけられたし」とチャチャを入れるギリアム。「未来世紀ブラジル」の時より確かに毛がなくなっているプライス、である。

現代のCM監督であり、ドン・キホーテの時代にタイムスリップしてしまう主人公トビーを、ジョニー・デップにかわって演ずるのはアダム・ドライバー。

「ギリアムはユニークでエネルギッシュでとてつもない人だと思う。撮影が終わってホテルに帰ってもその熱気が抜けないんだ」
ドライバーがキャスティングされたのは「スターウォーズ フォースの覚醒」の前のこと。ということは
「ギャラが安かったしね」とギリアム。「ちょうどイギリスで撮影してたから、ポルトガルの撮影にも参加しやすかったし」ととぼける。
2016年のカンヌで発表されたキャストのまま完成作に出演しているもう一人がオルガ・キュリレンコ。女性キャストが一人だけだったので当然ドン・キホーテの思い姫ドルシネア(本当は姫ではない)役と思いきや…
「こんなスーパー・ビッチを演じさせてくれて、テリーありがとう。すっごく楽しかった」なのだ。

ドルシネアにあたるヒロインを演ずるのは新星ジョアンナ・リベイロ(会見最初のキャスト紹介で忘れられてしまいちょっとショックを受けていた)である。

司会の人、この人紹介忘れてる!とギリアム

大丈夫でーす

アメリカ人のCM監督トビーはスペインで撮影中、学生時代この付近の村で自主映画を撮影したことを思い出す。それはドン・キホーテの物語に想を得た映画だった。キャストとして地元の人たちをスカウトして撮影したその映画が、トビーをこの仕事に就かせるきっかけになっていた。思い出の村を訪れたトビーは思いがけない人物と再会し、思いがけない冒険へと巻き込まれていく…まるでドン・キホーテの冒険に巻き込まれるサンチョ・パンサのように…。

フランスではカンヌのクロージング上映が終わったとたんに公開されることが決まっているし、世界各国の上映も続々決定中。日本の公開が未定なのが、大変残念。ぜひ、公開してほしいものだ。

  • 2018.05.19
  • まつかわゆま

今年も来とるんかいっ!行ってQ。

見っけ〜!

  • 2018.05.19
  • まつかわゆま

スタンディング・オーベーション最長記録を更新 AT WAR会見

ヴァンサン・ランドン(上)

公式上映でスタンディングオベーションの最長記録を更新したと司会に紹介された「AT  WAR」。自動車会社の労働争議を描く社会派映画。現在、国鉄やエアフランスがストライキの最中ということもあるためか、フランスメディアに人気があるようだ。

労働組合のリーダーが会社に脅される。その訴えに対して弁護士などがたちあがった。

「今、労働者たちは怒っている。その怒りの中にカメラを置いてみようというのが製作のきっかけ。ここ、カンヌに来られないような普通の人たちの怒りを伝えたい」とステファン・ブリゼ監督。

ブリゼ監督とは「ティエリー・トグルドーの憂鬱」で組み、カンヌ男優賞を受賞して以来、労働者階級代表俳優になった感のあるヴァンサン・ランドンが主役を務める。ランドンが熱っぽく語る。
「今、現実で何が起こっているのかを見せるのが、映画や文化の使命の一つだと思う。我々映画のスタッフやキャストも労働者なんだ。我々は労働者たちの運動に加わりたいし、ジャーナリストの皆さんにはそれを報道して運動を応援して欲しい」
なるほど、スタンディングオーベーションで盛り上がるわけだ。

  • 2018.05.18
  • まつかわゆま

地獄のロサンジェルス、殺人紀行 UNDER the SILVER LAKE会見

ホラー「It follows」でスマッシュヒットを飛ばしたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の”ロサンジェルス地獄行”。主演はアンドリュー・ガーフィールドだが、アメリカ映画にしてはガーフィールドを始めキャストがひとりも登壇していない、スタッフばかりの記者会見とは珍しい。
「LAを舞台にしたミステリー。音楽とカメラを重視した作品だ。音楽の担当はゲーム音楽が専門の人なので、「ブルーベルベット」「市民ケーン」「めまい」「タクシードライバー」などを見てイメージをふくらませてもらった」
こういう参考映画を並べると監督が目指した映画のタッチやトーンは分かるというものだが、と言ってそれが成功しているとは限らないのが映画というものである。

 

  • 2018.05.18
  • まつかわゆま

東出昌大が心酔した天才監督 寝ても覚めても会見

初カンヌでコンペティション入りという快挙を果たした濱口竜介監督の「寝ても覚めても」の会見がおこなわれた。


まず司会から監督への質問。劇中で地震がおこりますね。ヒロインはふたりの男性の間で揺れますが、この地震の揺れはヒロインの揺れのメタファーなのでしょうか?
「僕は震災のドキュメンタリーを作ってきました。震災はこの日常が明日も同じように続くという世界観をひっくり返しました。そこを盛り込もうと考えてのもので、ヒロインの心の揺れとは気がつかなかった(笑)」

「被災地でドキュメンタリーを撮ったのですが、基本的にインタビューで構成しました。その時考えたのが、カメラに対して自分の人生をさしだしてくれる人が映画に力を与えるのだということ。ならば、フィクションの場合に、人生が体に表れるようにするにはどうしたらいいかと考えたんですね。
その結果、テキストを信頼することだなと考えて、まずはテキストをそのまま体に入れる作業として、感情を込めずに何回も繰り返しテキストを読み覚えて体にしみこませるということをしました。最初に直感的に好きだと思えるキャストをえらび、後は現場の反応をとらえることに集中しました」
それを東出昌大は”濱口メソード”と呼ぶ。


「日本の映画では1週間から1か月で撮影します。その日会って初めての相手と長年の親友だという演技をすることもある。それでも準備していくのがプロですが、準備すると言うことは自分が持っている技術や形の中で用意するわけで、芝居くさくなってしまうんです。それを濱口メソードでははぎ取るところから始めます。素人に戻して、そこにテキストをしみこませていく。
今回二役だったので、声色を変えて演じようとしたら、そういうのいりませんと言われました。テキストにふたりの違いが書き込んであるのでそれを体に入れて、僕を通して出せば、違うふたりになるって。本当にその通りでしたね。すごいなって思いました。天才ですよ、濱口監督は!」
俳優が監督に心酔した様子が伝わる会見になった。

シネマアナリストまつかわゆま

演劇に明け暮れた大学卒業後、女性誌編集者を経て映画ライターに。映画から時代を読むシネマアナリストをめざし、雑誌・テレビ・ラジオ・ウェブなどに書いてしゃべって四半世紀を超えました。東放学園講師など、先生業も。現在、大学院でドキュメンタリー映画を研究中、第三の青春を謳歌しています。著書に「映画ライターになる方法」(青弓社)、「シネマでごちそうさま」(近代映画社)など。

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